これでカミーユシリーズおしまいかと思うと、とても複雑。
位置: 1,358
ルイがせっせと情報を集め、何ページも、何十ページも資料を印刷し、それをカミーユが片っ端から読んでいく。粘り強く。
ルイの「中川」感もいいし、何よりふたりのバディ感がすごい。
位置: 1,546
カミーユは気づかないふりをしたものの、ジャンのその強情な顔つきはロージーによく似ていると思った。家族の類似というやつは、往々にしてうっとうしいものだ。
困ったもんだね。世界中でそうなんだ。
位置: 1,595
「こっちを見てくれ」
カミーユは小声でそっと言うと、ようやくジャンが目を上げた。
「ロージーは完全にいかれてる。きみもわかってるだろう? 絶対に釈放できない。これは初めから負け戦なんだ。自分のことを考えろ。彼女のためにきみはできることを全部やった。よくやった。ここまでのきみの行動はわたしには理解できるし、ほかの連中も理解してくれるはずだ。だから、いまはとにかく終わりにするんだ」位置: 1,605
「さて、どこから始める? きみが決めていいぞ」
「金額から」
カミーユは反応できなかった。マジックミラーの向こうのどよめきが聞こえたような気がした。
ジャン・ガルニエは誰にも息をつかせなかった。
「そうです、金額。昨日最後に、誰かに三百万でもいいって言いましたけど、それは昨日の話で、今日はもう、四百万じゃなきゃだめです。」
的外れなんですよね、このあたりの言動が。
全然違う。意図のすれ違い。このあたりが妙に滑稽でいいんですよ。
それでいて恐怖でね。
位置: 1,686
「能無しですよ。あなたは自分が感じたことしか理解できない。ジャン・ガルニエの言うことが単純だから、頭も単純だと思っている。しかし単純なのはあなたの考え方のほうです。あなたは彼を見ているだけで、観察していない。あなたは彼を型にはめているだけで、彼を理解していない。ジャン・ガルニエは危険だ。でもそれは彼が爆弾を仕掛けたからじゃない。それどころか、彼は死者が出ないように、負傷者と物的被害にとどまるように、あらゆる手を打っている。
カミーユは次第に犯人と同化してくる。
尊敬し、侮蔑してくる人たちに噛み付く。
そしてジャンの崇高な理念に気づく。
位置: 1,707
《アンヌ、ごめんよ、首相に呼び出された》
《それっていままでで最低の言い訳!》
《ほんとなんだ。いまマティニョンに向かってる》
《首相と一晩過ごすってわけ?》
《そうはならんだろう。でも頼まれたら断れないな。なんてったって首相だぞ》
《だったらわたしのために公営住宅を頼んでくれない? 七区がいいな》
《わかった。で、もし泊まれと言われたら、おれはどうすりゃいい?》
《五区か六区か七区のを約束してくれたら、泊まる。そうじゃなかったら、あなたは戻ってきて、うちに泊まる》
《よし、そうしよう》
そして仕事延長の言い訳。コミカルでいいですよね。ちょっと皮肉が効いてて。
最期、ジャンの真の狙いが明らかになった、その刹那にロング・グッド・バイです。
ルメートルの本はいつもそんな感じの印象がありますね。最期のページは恐ろしく展開が早い。
しかし、もうカミーユたちに会えないと思うと残念だ。
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