『教室が、ひとりになるまで』感想 青い、青いよ

異能力バトルのミステリ。肌には合わぬ。

北楓高校で起きた生徒の連続自殺。ひとりは学校のトイレで首を吊り、ふたりは校舎から飛び降りた。「全員が仲のいい最高のクラス」で、なぜ――。垣内友弘は、幼馴染みの同級生・白瀬美月から信じがたい話を打ち明けられる。「自殺なんかじゃない。みんなあいつに殺されたの」“他人を自殺させる力”を使った証明不可能な罪。犯人を裁く1度きりのチャンスを得た友弘は、異質で孤独な謎解きに身を投じる。新時代の傑作青春ミステリ。

嘘を見抜く能力だの、幻覚を見せる能力だの、まぁ、そんなのあったら殺しは起こるよな、という印象。どうしてもっと前から殺人が起こってこなかったのか不思議。創立100年くらいにはなりそうな高校なのにね。思春期なんてイデオロギーの違いで簡単に人が殺せる年頃よ。

位置: 395
7.《受取人》が死亡した場合は、先代の《受取人》が新たな《受取人》を在校生の中から再度選出する必要があり

結構この、「受取人」の規定が複雑なのよね。もう少しシンプルにならなかったかな。

位置: 611
最後の文を読み上げたとき園川の声は震えなかった──が、これは情報としては誤ったものであった。マーチンの創業者であるクリスチャン・フレデリック・マーティンはドイツ人で、アメリカ人ではない。よって客観的に言えば園川は噓をついたということになるのだが、 「楽器メーカーなんて知らないよ。ヤマハくらいしかわかんない。で、これなんなの?」
園川自身はその事実を知らなかった。つまり彼の中では『噓をついた』という自覚がなかったということになる。よって園川は誤った情報を口にしたが、噓はついていないということだ。声が震えないのは、判定として極めて正しい。

そうそう、異能力はその実証が面白いのよね。自覚がなければ声は震えない。

位置: 1,839
「心の準備が必要なのはわかる。だから夏休みが始まるまでは待っててあげる。それまでに、私のもとに来てきちんと謝罪をして欲しいの。そしてあなたのお仲間である八重樫卓にも私を追うことをやめるように伝えてもらっていい? それができないのなら、たぶんあなたは──九月の学校には来られない。それより先に、 死にたくなってしまう

恐ろしい死の宣告。策士だ。
檀優里って名前がまた、いい。良いネーミングセンス。

位置: 2,416
首を横に振った。 「やっぱりみんな、死んじゃったんだな……U・N・オーエンはどこにもいなかったわけだ」

そして誰もいなくなった。

位置: 2,599
八重樫に檀優里の能力がわかったことを伝えたくなかった理由は単純だった。彼が次に起こそうとする行動がなんとなく想像できてしまい、どうしてもそこに踏み込むことに抵抗があったからだ。
犯人がわかれば解決編──警察に突き出してハッピーエンド。  そうできないのが、今回の事件の最大の問題だ。

ここ、この物語の面白いところ。
警察に突き出してハッピーエンドに出来ない。よく考えられてる。

位置: 2,650
それに死神が命を狙っているから山霧さんに学校を休んでもらいたい──って言ってたのも、思えば能力の範囲を把握しているみたいで不思議だった。

ふむ、確かにそうだった。

位置: 2,923
「何も心配しないで。たったいま気が変わったから、あなたは殺さないでおいてあげる。だから死にたくもならない。怖がらせてごめんね」
拍子抜けするようなことを言うと、檀優里はそのまますぐに立ち上がった。

この悪玉感。敵役として最高。

位置: 3,133
「お前みたいなネジの飛んでるヤツに意味なんてあるわけねぇだろうがよ。みんな最高の友達だったのに、最高の仲間だったのに、俺たち、最高のクラスだったのに……お前が全部めちゃくちゃにしやがって……」
「……それ、本気で言ってるの?」
「はあ?」
「ごめんなさい。本気で言ってるから、救いようがないんだろうね」

まぁ、こういう意識になるときあるよね。どっちも分かる。
八重樫ムーブもしたことあるし、檀みたいに思っていたこともある。

位置: 3,159
「私の究極の目的は、たぶんあなたたちと同じ。真の意味であのくだらないスクールカーストを撲滅させること。ただし手段が違った。私が目指したのは、教室を一つにすることではなく、 教室をひとりにすること。

レトリックです。これをセンスいいと取るかどうかは感性でしょう。あたくしはそれほど。

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