『東雲侑子は短編小説をあいしている』 薄味でした

たまーに読みたくなるんですな、ラノベ。

何事にも無気力、無関心な毎日を過ごす高校生、三並英太。楽そうだからという理由だけで図書委員になった彼は、ともに委員を務める東雲侑子の熱のない静けさに、自分の空虚さに似たものを感じていた。しかし偶然彼女の秘密を知ってしまったことから、自分との違いを思い知らされる英太。だが、その秘密のために、彼女と距離を縮めることとなり、失ったはずの感情に胸を締めつけられていく……。早熟な少年少女に贈る、もどかしく苦いラブストーリー。

単純に自分も短編小説が好きだから購入。この「短編小説が好き」という気持ちをどう分解して説明してくれるのかなと期待していたのです。結果、「人生は短編小説のようなもんだ」的な説明(だったかな?)に終わり、腑に落ちるとは言い難い感じにはなりましたが。

お決まりの無気力主人公が熱量を秘めたクラスメートに惹かれ、ひょんなことから付き合い始めて……みたいな展開。王道といえば王道だし、使い古された道といえば間違いなく、そう。

ただ、そこに短編小説という要素を入れて甘酸っぱく仕上げた所が値打ちなんでしょうな。さくっと読めるのもいい。

位置: 375
あいつに彼氏がいた事に、俺はやっぱりショックを受けているのだ。  好きとか嫌いとか、そういう事じゃなく、あいつには何となく、孤高の存在でいて欲しかった自分がいる。

わからんでもない。

位置: 2,135
ギシギシと軋む階段の音を聞きながら、馬鹿だな、と思う。
わざわざ質問して、一番聞きたくない答えを引き出した自分に腹が立った。
「素敵、か……そうだよな」
東雲に聞こえない声量で愚痴るように呟く。
そんな事は分かってたはずだ。景介と俺を比べたら、誰だって景介を選ぶだろうさ。
有美さんの時に感じた絶望感よりも、今感じているそれの方が遥かに大きいのは、きっと相手が東雲だからなのだろう。自分のクラスメートで、少なくとも表向きには俺の彼女という事になっている東雲さえ、景介を「素敵」だと言う。それが俺には堪らなく、嫌だった。

これもわからんでもない。
もう少し物語に深みがあるとより好みなんですけどね。

The following two tabs change content below.
都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』