『ダンス・ダンス・ダンス』に出てくる春樹の中二性

結構、中二病的なことを書くんですよね。

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人生はもっと多くのデータを彼に要求する。明確な図形を描くための、よ り多くの点が要求される。そうしないことには、何の回答も出てこない。
でーたフソクノタメ、カイトウフカノウ。トリケシきいラオシテクダサイ。
取消キイを押す。画面が白くなる。教室中の人間が僕に物を投げ始める。もっと喋れ。もっと自分のことを喋れ、と。教師は眉をしかめている。僕は言葉を失って、教壇の上に立ち すくんでいる。
喋ろう。そうしないことには、何も始まらない。それもできるだけ長く。正しいか正しくないかはあとでまた考えればいい。

p15

このカタカナを混ぜて書く感じ。
かなり臭い。当時(1988年)にはまだそんな言葉はないけれど。ポスト・バブル感なのかしら。ちょっとケミカルな感じの酔い方してるな、って印象ね。

僕は彼女を見ながら、あの子と寝ようと思えば寝られ たんだ、と思った。
時々そういう風に自分を勇気づける必要があった。
十分ほど彼女を眺めてから、エレベーターで十五階に上がり、部屋で本を読んだ。今日も 空はどんよりと曇っていた。ほんの少しだけ光が入ってくるはりぼての中で暮らしているよ うな気分だった。いつ電話がかかってくるかもしれないので、外に出たくなかったし、部屋 にいれば本を読むくらいしかやることもなかった。ジャック・ロンドンの伝記を最後まで読 んでしまうと、スペイン戦争についての本を読んだ。

p109

何が好きって、この「あの子と寝ようと思えば寝られた」というところね。
ヤレたかも委員会ですよね。

春樹にも、「ヤレたけどあえてヤラなかったんだ」という夜があったのでしょう。それをジャック・ロンドンやスペイン戦争を読み、サンドイッチを食べ、やり過ごすのでしょう。

そう思うと憎めない。

ロックンロール。世の中にこれくらい素晴らしいものはないと思ってた。聴いてい るだけで幸せだった」
「今はどうなの?」
「今でも聴いている。好きな曲もある。でも歌詞を暗記するほどは熱心に聴かない。昔ほど は感動しない」
「どうしてかしら?」
「どうしてだろう?」
「教えて」とユキは言った。
「本当にいいものは少ないということがわかってくるからだろうね」と僕は言った。「本当にいいものはとても少ない。何でもそうだよ。本でも、映画でも、コンサートでも、本当に いいものは少ない。ロック・ミュージックだってそうだ。いいものは一時間ラジオを聴いて 一曲くらいしかない。あとは大量生産の屑みたいなもんだ。でも昔はそんなこと真剣に考え なかった。何を聞いてもけっこう楽しかった。若かったし、時間は幾らでもあったし、それ に恋をしていた。つまらないものにも、些細なことにも心の震えのようなものを託すること ができた。僕の言ってることわかるかな?」
「何となく」とユキは言った。

p193

これ、すごい共感するんすよね。あたくしもロックンロールが好きで、それこそ毎日MDを持ち歩いて聞いていた過去があるんですが、今やそんなことない。ひと月くらい音楽聞かない日が続くこともザラだし、音楽全般への興味が薄い。

この番組を聞くくらい。

「退屈じゃない?」と僕は聞いてみた。
「ううん。悪くない」と彼女は言った。
「悪くない」と僕も言った。
「今は恋をしないの?」とユキが訊いた。
僕はそのことについて少し真剣に考えた。「むずかしい質問だ」と僕は言った。「君は好き な男の子はいるの?」
「いない」と彼女は言った。「嫌な奴はいっぱいいるけど」
「気持ちはわかる」と僕は言った。
「音楽聴いてる方が楽しい」
「その気持ちもわかる」
「本当にわかる?」とユキは言って、疑わしそうに目を細めて僕を見た。
「本当にわかる」と僕は言った。「みんなはそれを逃避と呼ぶ。でも別にそれはそれでいい んだ。僕の人生は僕のものだし、君の人生は君のものだ。何を求めるかさえはっきりしてい は、君は君の好きなように生きればいいんだ。人が何と言おうと知ったことじゃない。

p194

アドラーでいうところの課題の分離ですかね。

とはいえ、春樹主人公の有りがちな「わかるよ」「信じるよ」のオンパレード。つまり、春樹主人公は女性に共感・共鳴を伝えることでベッドまでつれていけるのだ。悔しいが羨ましい。

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