西村賢太著『夜更けの川に落葉は流れて』感想 一切心には残らない、いつもの賢太。

読みだしたら止まらないんですよね。

稀代の無頼、西村賢太の原点を炙り出す、新たな代表作。憬れだった築地市場での仕事をたった一日で失うことになった若き日の北町貫多を描く「寿司乞食」。すべてに無気力で受動的だった貫多を、やや向日的な世界へ引き戻したのは梁木野佳穂という女性だった――「夜更けの川に落葉は流れて」。後ろ髪を引かれる思いでいた“あの店”。貫多と店主の20数年にも及ぶ蟠りがある深夜に最高潮を迎える「青痰麺」。表題作含む三篇収録。

短編三つ、どれもいつもの賢太ではあります。

夜更けの川に落ち葉は流れて

位置: 377
落伍者だと云うのなら、それでも良い。その烙印付きの自分なりの流儀に沿った生きかたを、多少は人に迷惑をかけたところでかまわぬから自分の為だけにやっていってやろう、との歪んだ意志が固まってもきた。
どうでこの先、何を人並みのことを目指し、奮起をしてみたところで、所詮はどうにもならないのである。

表題作。

身も蓋もない。しかしそういう割り切りが必要なときもあるよね。
賢太の場合はそれが功を奏することがないのがエンタメとして楽しいんだけどね。

位置: 729
値段も値段であるし、同じ無頼派でも田中英光は坂口安吾や織田作之助よりは幾分か人気の方は劣る。

田中英光って安吾やオダサクと同系統として語られるんだね。


まとめ

安定の西村賢太。相変わらず楽しく読ませてもらいました。

The following two tabs change content below.
都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする