最近、身近なところで立て続けに言及され、未読だったので慌てて読了。
短いけど面白い、太宰の真骨頂ですね。
「無頼派」「新戯作派」の破滅型作家を代表する昭和初期の小説家、太宰治の短編小説。初出は「新潮」[1946(昭和21)年]。自称小学校時代の友人という男の訪問を受けたときのやりとりを描いた話で、主人公の「私」はそのことが自分の記憶に消し難い記憶を残すという。皮肉の効いたユーモラスな作品でありながら、戦後の風潮をよく捉えた作品である。
皮肉で自嘲的で、それでいてユーモラス。いいよね、太宰。
目指すべきところはここかもしれない、なんて、思った男子は数知れずだろうなぁ。
位置: 121
私は東京に於いて、彼の所謂「女で大しくじり」をして、それも一度や二度でない、たび重なる大しくじりばかりして、親兄弟の肩身をせまくさせたけれども、しかし、せめて、これだけは言えると思う、「ただ金のあるにまかせて、色男ぶって、芸者を泣かせて、やにさがっていたのではない!」みじめなプロテストではあるが、
おそらくあの世でも、太宰=プレイボーイとして、そういう色眼鏡で見られているでしょうね。本人はいたって真面目なのかしら。知らんけど。
そしてあの世でも、みじめなプロテストしているのかしら。
位置: 330
私は押入れから最後の一本を取り出して、彼に手渡し、よっぽどこのウイスキイの値段を知らせてやろうかと思った。それを言っても、彼は平然としているか、または、それじゃ気の毒だから要らないと言うか、ちょっと知りたいと思ったが、やめた。ひとにごちそうして、その値段を言うなど、やっぱり出来なかった。
これも小市民的で素敵なフレーズ。いいじゃない。
粗野な男が親友の振りして家に上がり込んできて痛飲された、ってだけの話なんですけどね。これが確かに、何かと話題になりそうな、面白い人間の機微に触れた感じね。
幡随院長兵衛にも言及するし、やっぱり昔の日本人は歌舞伎・講談に通じていたんだなぁと思う今日このごろ。
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