自分の延長に天才がいるのかもしれない。『天才たちの日課』

大同小異といいますか、おこがましくも己と天才との共通点を見出してしまいそうになります。

位置: 1,909
「ものごとがきちんと秩序だっているのが好きなんだ」一九九〇年、アメリカの映画監督のリンチはある記者にそういっている。 ここ七年間、食事はビッグボーイでとっている。行くのは二時半ごろ。昼の混雑が一段落したあとだ。チョコレートシェイクを一杯と、コーヒーを四杯か五杯か六杯か七杯──砂糖をたっぷり入れて飲む。チョコレートシェイクにも砂糖がたっぷり入っている。濃いシェイクだ。銀のゴブレットに入っている。大量の砂糖でハイになると、アイデアが次々に湧いてくるんだ。それをナプキンに書きとめる。

内田百閒先生も昼は蕎麦屋って決めてましたね。あのメチャクチャな映画をとるデヴィット・リンチ監督が、むしろ毎日ビックボーイに行って決まったシェイクを飲むという事実が面白い。

位置: 2,336
デカルトは、優れた頭脳労働をするには、怠惰な時間が不可欠だと信じていて、ぜったいに働きすぎないように気をつけていた。早めの昼食をとると、散歩に出かけるか、友人と会って雑談をした。夕食のあとは手紙の返事を書いた。

その信念。デカルト。我怠惰故に我あるのか。素敵な信念だ。手紙とか日記とか、昔の人は好きだなぁ。今はSNSとかに変わってるだけか。

位置: 2,350
「いま私は『ファウスト』の第二部に取り組んでいるが、書けるのは早朝だけだ。その時間帯なら、睡眠によって気力が回復しているし、日々のつまらない問題にまだ煩わされていないからだ。しかしそれでどのくらい書けるのか? 幸運に恵まれれば、一ページ書けることもあるが、たいていは手の幅ほどしか書き進めることができず、気分がのらないときは、それ以下のこともよくある」。
〝気分がのらない〟のは晩年の悩みの種だった。ゲーテはインスピレーションが湧かなければ、仕事をしようとしても無駄だと考えていた。
「したがって、私のアドバイスは、なにごとも無理にやろうとしてはいけないということだ。気分がのらない日や時間は無為に過ごすか、寝るかしたほうがいい。そんなときに書いたところで、あとから読んで満足のいくようなものは生まれない」

ゲーテよ、お前もか。無理しないという信念。恵まれた信念ですね、おい。ブルジョワな悩みだな。

位置: 2,404
ある年下の音楽家があるときリストに、なぜ日記を書かないのかと尋ねると、彼はこう答えた。「毎日を生きるだけでじゅうぶんつらいのに、なぜそれを書きとめる必要がある? 日記なんて、拷問部屋の目録みたいになってしまう」

秀逸な返し。リスト。お前さんも随分とつらい人生を歩んできたんだな。何だか泣けて来るよ。

位置: 2,419
芸術家のなかには、コーヒーやアルコールやアヘンは必要不可欠だといってはばからない人がいるが、私はそれには賛成できない。自分自身の豊かな想像力ではなく、薬物の影響によって創作するのも楽しいだろうが、そんな状態が続くとは思えないし、そのことを得意げにひけらかすのもどうかと思う。想像力はそれだけでじゅうぶんに刺激的だし、じつをいうと、私にとってそれを高めるのに役立つのは、牛乳かレモネードを少し飲むことだけだ。

あたくしも珈琲と酒については、ほとんど中毒の域ですんでね。ジョルジュ・サンドにこんなこと言われると、どうも、恥ずかしくっていたたまれない。

位置: 2,430
「バルザックは気が狂ったように仕事に熱中し、その合間に気晴らしと快楽にも熱中した」。仕事のスケジュールは過酷なものだった。午後六時に軽い夕食をとったあと、ベッドに入って寝る。午前一時に起きて書きもの机の前にすわると、七時間ぶっとおしで書く。午前八時から一時間半仮眠して、午前九時半から午後四時まで仕事。その間、ブラックコーヒーを何杯も飲む(一日に五十杯のコーヒーを飲んだともいわれている)。

一方でバルザックですよ。珈琲を愛し、大量の飯を食らう。同じフランス人でもサンドとバルザックは違うように見えます。会ったら互いに尊重し合えるのかしら。とにかくバルザックの珈琲鯨飲ぶりはすごい。

位置: 2,601
「私は毎日書かなければならない。それは成果をあげるためではなく、習慣を失わないためだ」これはロシアの文豪トルストイが一八六〇年代の半ばに書いた数少ない日記のなかの一文で、『戦争と平和』の執筆に没頭していたころのものだ。

トルストイ、いいね。好きですよ、そういうスタンス。

位置: 2,640
「いつ、どこでかわからないが、ピョートルは、人間が健康でいるためには二時間の散歩が必要だと考えた。そしてそれを信じこみ、もし五分でも早く帰ってこようものなら、病気になるか、信じられないような不幸に見舞われると信じているようだった」

ピョートル・イリッチ・チャイコフスキーも病的でいいね。とても偏屈で病的。愛すべき変質者。

位置: 3,233
「六歳から二十二歳までの人生で、なによりも大切だったのは、父の経営する菓子屋だった」SF作家であり科学解説者でもあったアシモフは、死後に出版された回想録のなかで、そう書いている。アシモフの父はブルックリンで何軒もの菓子屋を開いていた。営業は午前六時から午前一時までで、基本的に休みはない。子どものアシモフも、午前六時に起きて店で売る新聞を届け、午後も学校から急いで帰ってきて店を手伝った。

位置: 3,247
たしかにいえるのは、あの菓子屋は、私にさまざまなメリットを与えてくれた、ということだ。それは単なる生きるのための手段ではけっしてなく、圧倒的な幸福につながるものだった。それが長時間労働ととても強く結びついていたために、長く働くことが私にとって快感になり、生涯の堅い習慣となったのだ。

労働を悪だと実感しているおじさんとしては、アシモフさんにゃ同意できないけど、でもそういう人もいるよね、とは思います。しかし、菓子屋の営業時間が午前6時から午前1時まで、休み無し、って凄すぎません?勤勉すぎ。

そんな中でこそ育つ才能もあれば、きっと大半の人は潰れるよ。でもアシモフは生きて、素晴らしい著作を数多く残した。すごいね。

あたくしも随分と偏った本の読み方をしています。こと本著については、自分の共感する部分しか読まなかったと思われます。人間、偏るのも性だし偏っていることを意識するのも大切ね。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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