『暗夜行路』 前半と後半で読みやすさが全然違う 5

「間違い」って言葉、面白いですね。間が違うんだ。間男って言葉も、何だか面白い。

位置: 6,669
露骨にいえば水谷の友達で直子の 従兄 がある。それと直子が間違いをしたんだ」
「…………」
「それも直子自身に少しもそういう意志なしに起った事で、僕には直子が少しも憎めないのだ。再びそれを繰返さぬように云って心から赦しているつもりなのだ。実際再びそういう事が起るとは思えないし、事実直子には 殆ど罪はないのだ。それで 総てはもう済んだ筈なんだ。ところが、僕の気持だけがどうしても、本統にそこへ落ちついてくれない。何か変なものが僕の頭の中でいぶっている」

こういう分かっちゃいるけど腹に落ちない、ってことですね。まま、ありますな。実生活だとね。腹いっぱい食べて酒のんでひっくり返るくらいしか、できることはないように思いますね。

位置: 6,701
その後、衣笠村の 家 では平和な日が過ぎた。少なくも外見だけは思いの外、平和な日が過ぎた。お栄と直子との関係も謙作の予想通りによかった。それから謙作と直子との関係も悪くはなかった。然しこれはどういっていいか、──夫婦として一面病的に 惹き合うものが出来たと同時に、そこにはどうしても全心で抱き合えない 空隙 が残された。そして病的に惹き合う事が強ければ強い程、あとは悪かった。
妻の過失がそのまま肉情の 刺戟 になるという事はこの上ない恥ずべき事だ、彼はそう思いながら、二人の間に感ぜられる空隙がどうにも気になるところから、そんな事ででも尚、直子に対する元通りなる愛情を呼び起したかったのである。病的な程度の強い時には彼は直子自身の口で過失した場合を 精しく描写させようとさえした。

NTRってやつですかね。今の日本語でいうなら。
逆に刺激になるっていうね。しかしココロはどこか満たされない、そこを肉欲で埋めるという感じかな。

位置: 6,756
謙作は 毎年 春の終りから夏の初めにかけきっと頭を悪くした。殊に梅雨期のじめじめした空気には 打 克てず、肉体では半病人のように弱る一方、気持だけは変に苛々して、自分で自分をどうにも持ちあつかう事が多かった。

「自分で自分をどうにも持ちあつかう」って状態、あたくしにも覚えがありますね。どうにもならない。他人事のようですが、己ではいかんともし難い。

位置: 6,850
「お前はいつまで、そんな意固地な態度を続けているつもりなんだ。お前が俺のした事に腹を立て、あんな事をする人間と一生一緒に居る事は危険だとでも思っているんなら、正直に云ってくれ」
「私、そんな事ちょっとも思っていないことよ。ただ腑に落ちないのは貴方が私の悪かった事を赦していると 仰 有りながら実は少しも赦していらっしゃらないのが、つらいの。

赦しているつもりだが、どうにも身体が意地悪になっていけない。そんなこと、あたくしにもよくあります。

位置: 6,890
実際お前の云う事は或る程度には本統だろう。然し俺から云うと総ては純粋に俺一人の問題なんだ。今、お前がいったように寛大な俺の考えと、寛大でない俺の感情とが、ピッタリ一つになってくれさえすれば、何もかも問題はないんだ。イゴイスティックな考え方だよ。同時に功利的な考え方かも知れない。そういう性質だから仕方がない。お前というものを認めていない事になるが、認めたって認めなくたって、俺自身結局そこへ落ちつくより仕方がないんだ。いつだって俺はそうなのだから……。

もはや説明になっていない。分かるように説明するのが困難な問題だから。しかしそれを共有しないことにはどうにも前に進めない。こういうときは多くを語らず、普通に過ごすように勤め、時間によって己のココロと身体がぴったり一つになるのを待つべきなんじゃないかしら。

位置: 7,009
応挙寺へ向う。香住駅から

位置: 7,032
左甚五郎 が彫った竜という

google検索しても、左甚五郎の竜の話は出てきません。実在しないのかしら?

位置: 7,113
竜胆、 撫子、 藤袴、 女郎花、 山 杜若、 松虫草、 吾亦紅、その他、名を知らぬ菊科の美しい花などの咲乱れている高原の細い路を二人は急がず登って行った。

山陰の景色。
花にまるで造詣がないのでまったく想像のつかない。無念すぎますね。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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