『エンダーのゲーム』感想 1 SFの戦闘シーンって難しいね

重力がない戦闘をイメージするのって結構難しい。

地球は恐るべきバガーの二度にわたる侵攻をかろうじて撃退した。容赦なく人々を殺戮し、地球人の呼びかけにまったく答えようとしない昆虫型異星人バガー。その第三次攻撃に備え、優秀な艦隊指揮官を育成すべく、バトル・スクールは設立された。コンピュータ・ゲームから無重力訓練エリアでの模擬戦闘まで、あらゆるスクールの訓練で最高の成績をおさめた天才少年エンダーの成長を描いた、ヒューゴー賞/ネビュラ賞受賞作

出版が1985年、あたくしの2年後輩です。
しかし、あの時代に、まだファミコンも2歳ですよ、ここまでシミュレーターとかなんとかって考えつくものですかね。2020年に読んでもさほど違和感感じませんでしたよ。さすがっすね。

位置: 783
「申しあげたでしょう。彼の隔離を解くことはできません。だれかが自分を助け出してくれる、そう彼が信じるようになることはぜったいにあってはならないのです。ぜったいに。いったん安易な逃げ道があると考えたら、彼はおしまいです」

指揮官は絶対的に孤独でなければならない、という信念を感じます。
それはいわば経験が語るもの。野球のピッチャーも孤独だったなぁ。あれもマウンドに立たないとわからないよね。
すぐ野球に例えたがるのはおじさんの悪い癖だけど。

位置: 999
エンダーがすぐに調べた彼の名前はバーナードといった。本人は自分の名前をフランス訛りで〝ベルナール〟と発音する。というのも、フランス人は、そもそも傲岸不遜な分離主義でもって、フランス語のパターンがすでに染みついた四歳になるまで、標準語の教育は始めるべきではないと主張したからだ。フランス語訛りのおかげで、ベルナールはエキゾチックで人の興味をそそる。腕の骨折は、彼を殉教者にした。そのサディズムは、他人の苦痛を愛する者たちすべてにとって、自然と注目の的になった。

フランス人に対する偏見がすごい。
たとえそういう傾向があったとしても、露骨。
なんか嫌なことあったんかしら。

でも、「彼を殉教者にした」というのはいい意味なのかしら。そのへんのニュアンスは微妙よね。

位置: 1,009
彼はそういうたぐいの人間――つまりいじめっ子だった。エンダーを怒らせたのは、ほかの連中がどんなにやすやすとバーナードに迎合するかということだ。むろん、みんなもバーナードの復讐になんの正義もないことを知っていた。

結構この本で書かれている「いじめ」が生々しくていい。
特にエンダーはどちらかというと苛められる側で、その切り抜け方もいい。宇宙でも人間は苛めだのなんだの、やってるんだな、いや、きっとやってるな、なんて思うのも、SFならでは。

位置: 2,326
「人びとがバガーたちを恐れているかぎり、IFは権力の座にとどまっていることができて、IFが権力の座にあるかぎりは、特定の諸国が覇権を保っていることができるからさ。しかし、ヴィデオを見続けろ、エンダー。人びとは、もうじき、このゲームを見破るだろう。そして、すべての戦争を終わらせるための内戦があるだろう。それこそが脅威なんだ、エンダー。バガーじゃない。そして戦争がはじまったら、その戦争では、おまえとおれは味方同士じゃないだろう。おまえは、われらの親愛なる教官たちとまったく同様に、アメリカ人だからだ。そして、おれはちがう」

戦争は権力のために必要なんだ、という。これが書かれたのは冷戦末期であることを考えるとタイムリーな話なんでしょうね。世界がソビエトとアメリカと分かれて、それでいて宇宙人の侵略があるという設定。

位置: 2,339
信じてはいるが、しかし疑惑の種はそこにあり、そして去らずにとどまって、ときおり、小さな根を送り出した。その根を育てるということは、あらゆるものを変化させた。それはエンダーに、人びとが口に出すことではなく、その裏にある本音のほうに、より注意深く耳を傾けさせた。それは彼を賢くした。

行間を読む癖というのは、何かにつけて人を賢くさせるよね。

位置: 2,585
ピーターはつねに苦痛を育てる専門家だった。苦痛の種を植え、それをはぐくみ、食べごろになると貪欲にむさぼる。学校で、子どもたちを相手に鈍い残虐性をふるうよりは、こういう小さくてぴりりとした治療薬の形で飲むほうがいいだろう。

この物語の敵はバガーではない、ピーターなのだ。
とにかくピーターを悪として描く。サイコパス的であり知能犯である。本当に怖いのは己の身内ってね。

位置: 2,618
じつはこれが理由で、ヴァレンタインはほかの人びとよりもピーターのほうが好きだった。彼はつねに、いつでも、知的な利己性から行動するのだ。そんなわけで、自分自身の安全を守るためにヴァレンタインがしなければならないのは、死なせるよりは生かしておくほうが、よりピーターの利益になるという点をより確実にしておくことだけだ。

そしてそういう「わかりやすい悪」のほうが可愛げがある、とも言う。
なんだか分かるような分からないような。しかし、予測がつくというのは可愛いのかもしれませんね。いつでも知的で利己的。ある種分かりやすいんでしょうね。掌の上に載せやすいというか。

つづく。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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