ちょっとハルキ入ってる?『いなくなれ、群青』

映画化を機に。
なんだかすごくセンチメンタルな話。

11月19日午前6時42分、僕は彼女に再会した。誰よりも真っ直ぐで、正しく、凜々しい少女、真辺由宇。あるはずのない出会いは、安定していた僕の高校生活を一変させる。奇妙な島。連続落書き事件。そこに秘められた謎……。僕はどうして、ここにいるのか。彼女はなぜ、ここに来たのか。やがて明かされる真相は、僕らの青春に残酷な現実を突きつける。「階段島」シリーズ、開幕。

かつてここまでの感受性が、あたくしにあったろうか。いや、なかったんじゃないかな。おそらく作者は誰よりも傷つきやすく、またファンもどこまでも繊細な方なんでしょう。あたくしのようなどんぶり勘定野郎には緻密すぎる話でした。おおざっぱな人間には共感しにくい話かも。

それよか、なによか、ちょっと村上春樹入ってる感じしません?

位置: 54
「オレは一〇〇万回の人生で、一〇〇万回、幸せについて考えた」
「答えはわかった?」
「どこかでわかっていたなら、一〇〇万回も考えない」
「そりゃそうだね」
「でも、なんとなく予想はついたよ。つまり幸せってのは風を感じることなんだ」
「ずいぶん詩的だ」
「猫はおしなべて詩的だよ。君は詩的じゃない猫に出会ったことがあるかい?」
「どうかな。たいていの猫は 喋らないから」
「沈黙は詩的だよ」
常識じゃないか、といった風な目で、彼はこちらをみた。

この百万回生きた猫君の存在も、かなり危ない。
もろくってあやうくって、みちゃいらんない。「猫はおしなべて詩的だよ」なんて思ったこともない。

位置: 1,322
「真辺さんのそばにいる誰かが、七草くんじゃないといけないの?」
彼女の声はか細く、怯える子猫みたいに震えていた。
「久しぶりに聞いたな」
僕は微笑む。
「堀の声、けっこう好きだよ」
真辺由宇のそばにいるべきなのが、僕だとは思わない。
それでもこの島で、彼女を理解しているのはきっと僕だけだから、今は離れるわけにはいかない。

ちなみに今、これ書いている時点で6巻の途中まで読んでるんですけど、このあたりとか今読み返すと思惑在りすぎてちょっとたまんないです。堀がどんな気持ちでこのセリフを出したのかとか。

位置: 1,522
僕はそこまで開き直ってはいない。それでも僕の行動のベースには、いつだって悲観的な思考がある。真辺由宇とは正反対だ。我慢の同義語は諦めだ、と僕は言った。我慢の対義語が諦めだよ、と彼女は言った。

こういう言葉の定義とか、生き方の指針とか、そういうのを延々と争う話です。定義づけしたがりの集い。大人になるといろんなところがファジーになってね。「それでいいじゃん」になっちゃう。それが良いこととは言い切れませんが、そうならないと生きていて苦しい。

位置: 1,637
「人間は、本当に大切なことはなにも知りたがらないからね」
「好きな星は大切なことかな?」
「食べ物や色なんかよりは、ずっとね」
「どうして?」
「決め難いからだよ。決め難いものを決めるには、どうしても体験か、哲学が必要になる。本当に尋ねるべき質問はこうだ。── 貴方 が最後に、影をまじまじとみたのはいつですか? 爪切りを買うときの判断基準はなんですか?

これなんか「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」そのまんまですよね。ソファには哲学が必要だ、でしたっけ。

位置: 2,168
「で、どうして君は落書きをしたんだい?」
「意外にしつこいね」
「ミステリを読んでいて、オレがまず気にするのは動機だよ。ホワイダニットがいちばんしっくりくるんだ。動機さえ納得のいくものなら、犯人も密室トリックもおざなりでいい」
「動機ね」
僕はため息をつく。

やれやれ、ってか。それもいい。
確かにあたくしも、ホワイダニットが一番気になる。

ミステリ要素もあり、ノックスの十戒的にどうなの?てきな展開もあり。それでいて感受性豊かすぎる文章があり。なかなか面白かったです。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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