『これやこの サンキュータツオ随筆集』感想2 死亡フラグ怖い

しかし毎週月曜日に寄席に行く、ってのは最高の定点観測だな。
あたくしも時間とお金に余裕があればやりたいな。

位置: 1,600
私は大学生だったが、心のどこかにロマンチストな乙女がいたので、徹底的にリアリストな大人に触れ新鮮だった。 「古本には、白い本と黒い本というのがあるんです。白い本とは真面目な本で、神保町に行けば探せる本なの。でも黒い本というのは、私なんかでも一生に一度出会えるかどうか、そういった珍しい本ね。図版やデータが載ってて、明治や大正に出版されたもの。カフェー関連や講談、落語の速記、鉱石ラジオ。うちはそういう黒い本しか置かないの。

そんな古本屋があるなんてこと、長らく上野に通っていながら知りませんでしたね。新聞配達なんてやってる場合じゃなかったな。

位置: 1,647
ここには、土地柄か変わった売り手もいた。ホームレスが本を売りに来るのである。しかし、ただのホームレスではなく、高く売れる本を見極める眼力があるホームレスなのだ。毎週の古紙回収の日の早朝に、都内のゴミ置き場をあさって、値段のつく本を探し出しては、それをもっとも高く売れる古書店に持ち込む。資本金がなく生活できる特殊技能である。こうして生活をしている人もいるのだから、この世界はたまらない。

まるで美味しんぼだよ。眼力のあるホームレス。
実際にいるんだね、そんな人。

位置: 1,809
今日もどこかで、ベタベタとした人間関係に流れることなく、だれかを支え、なにかを作り、人を楽しませる「裏方」と呼ばれている人たちがいる。しかし、ともにお客さんを迎え入れ、幕を上げるのはおなじだ。  私たちは中川さんとともに、まだ何回も幕を上げる。

あたくしは気質的に裏でも表でもいたい人なので、「裏方」の楽しみもよくわかります。
あれって気持ちいいんですよね、最高の舞台鑑賞者は裏方じゃないかな。自分手製のものをベースに出演者が予想以上のパフォーマンスをしたときの気持ちよさったら。

位置: 2,011
祖父は生まれたときから戦争で父を亡くしていた。母子家庭で育ったが家計を支えるために帝国大学まで行き、銀行に勤める傍ら仏像の研究をしていた。郷土史家のようなものもやるほど歴史が好きだったようである。私が奈良に通い詰めた時代はすでに定年退職しており、歴史探訪ライフを満喫していた。 薬師寺 の再建資金の調達のために百万塔なる木製の五重塔のミニチュアを作り、それを売って資金にするという資金管理の仕事をしていた。新聞の歴史にまつわる記事を切り取ってはスクラップブックにまとめており、美術史研究の論文集などにも目を通し、たまに寄稿する。しかしそれは家族のだれにも話さない。

とんでもない祖父だなぁ。祖父がそんな人だったら、と思うとワクワクしますね。
あたくしは祖父という人を一人しかしらないけど、どことなく自分のルーツを感じるんですよね。なんだか「祖父になる」という夢が出てきたぞ。

こういう「銀行に勤める傍ら」ってのが好きなんだよなー。

位置: 2,196
先生が思いもよらず、はじめて自分に踏み込んできた瞬間だったので意外だったが、「小学校2年のときです」と答えると、「そうか……大変でしたね、お母さんも」。それ以降、彼はなにも言わなかった。えらいなとも、頑張るんだぞとも、言わない。変なこと聞いてすまないなとか、そういうことも言わない人だったのだ。 「帰ってよし」、次の瞬間にはそれできれいさっぱりだ。いい距離感の大人だなと感じた。

感想が「いい距離感の大人だな」ってのがタツオさんだよなー。
あたくしも後輩からそういうように思われるよう、努力したい。

位置: 2,247
「申し訳ありません」という言葉は「申し訳ある」という言葉がない以上その否定形も存在しないことになっているのだが、

いつも思ってた。
「○○ということなので、申し訳ありませんが」っていうけど、「○○」って申し訳してるじゃん!ってね。

位置: 2,468
ユウキちゃんは絵も上手だった。
ユウキちゃんの描く絵はとても 緻密 でリアルであり、電車を描かせても山を描かせてもホントによく観察している絵だった。小学生のとき、ユウキちゃんが描いたあるひとつの絵を見て私はハッと気づかされた。雲が「もくもく」していなかったのだ。
私はそれまで、雲を頭と目で認識していながらも、絵を描くと「もくもく」させていた。いつからか、絵本に描いてあるあの「くも」をむやみに信じていた。しかしユウキちゃんの描く雲は「もくもく」しておらず、そしてそれが本物らしかった。この人の目はごまかせない。人の描く絵に影響されず、自分の見た通りを描ける人だ。ユウキちゃんの目は、自分の目よりも正確にいろんなものを見ている、と思った。

もうこのへんでユウキさんへの信頼というか、畏敬の念があるんですよ。
ただ、この本で紹介されるということは……ってなりますね。

タツオさんがいかにしてタツオさんになったか、の端々をみることができて幸せ。
タツボ(タツオボーイ)の一人として大変に嬉しいファンブック、もとい随筆集でした。
なんだか川上弘美さんの本が読みたくなったな。根底に百間イズムがあるからかしら。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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