『迷路館の殺人』感想 増して衒学的だが好き

いつにも増して衒学的。神話とかが嫌いってのはある。

でも、話としては十角館並に面白いと思いました。

位置: 769
名工ダイダロスに命じて迷宮を造らせたクレタの王の名だが、製作者のミスだろうか、ローマ字表記のその 綴りは本来よりもSが一つ多かった。

しかしわかりやすい伏線。

位置: 1,090
「迷宮の怪物を倒したテセウスは、アリアドネを連れてクレタ島から逃げ出した。その後、アリアドネはテセウスに捨てられてしまうんだけど、そこへディオニュソスが現われて、彼女を自分の妻にしたっていうエピソードもある。

この辺、現代の感覚だと「登場人物多すぎ」って思うんですよね。そんなに覚えられない。
まだキャラ立ってないのに、ってね。傲慢かな。

位置: 1,140
ところが一方、 富士通 が出している〈オアシス〉という機種が、その例外として存在するのである。〈親指シフト〉という呼称で知られるその入力方式は、使うキーの数が従来よりもずっと少なくて済むというメリットを持っているが、それゆえ、キーボードのかな配列が他機種とはまったく異なっている。

親指シフト崇拝者っているよね。あたくしの周りにもいました。
これも衒学かな、と思ったらちゃんと伏線になっていましたね。

位置: 1,350
「本格ミステリの作家では、誰が?」
「本人はカー・マニアを自称しています。クイーンも好きだしクリスティもいい、最近ではコリン・デクスターやP・D・ジェイムズも見逃せない作家だけれども、大好きなのはやっぱりカーですね。本当にもう、古き良き探偵小説っていうあの感じがたまらなくて……」

同意ですね。カーの古典感は好きな人にはたまりません。

位置: 2,439
よく似た殺害方法が出てくるミステリを、宇多山はむかし読んだ記憶があった。
あれは……そう、エラリイ・クイーンの『Xの悲劇』だ。

ちょくちょく引用されます、Xの悲劇。
もう忘れてますね。今度読もうかな。

位置: 3,523
「逆だったんですね」
と云った。
「逆?」
わけが分らず、宇多山は首を 捻る。鮫嶋は、この時どこまで島田の考えを理解していたのだろうか、何とも複雑そうな面持ちでこう云った。
「順序が、私たちが今まで思い込んでいたのとは逆だったんですよ。──そうですね、島田さん」
「そのとおりです」
島田は鋭い視線を〝鏡の扉〟に投げかけながら、
「犯人は、四人の作家たちが書いた四つの作品に見立てて、それぞれの殺人を行なった。これが、今まで僕らが信じさせられてきた事件の構図です。けれども真相は逆だった。つまり、 そもそも四つの作品自体が犯人の創作物だったんです。被害者たちの手によってたまたま書かれた作品の内容が見立て殺人の題材に使われたのではなく、 そういった殺人を行なうつもりで犯人が事前に作品を用意しておいたんです。

この展開も好き。逆だったんです的種明かし。
人の先入観を逆手に取ったトリック。

位置: 3,868
ただ、後悔は決してしない。結局のところ、そう、私は そういう人間 だということなのだ。
私の人生はすべて、 己 が納得のいく〝探偵小説〟(いささかあくどい、自己陶酔的な云い方をすれば〝犯罪芸術〟)を創り上げる仕事に捧げられてきた。ならば、その人生に幕を下ろすに当たり、この迷路館を舞台とした宮垣葉太郎最後の作品を、彼らの血によって描ききってみよう。そう決意した。

いわゆる確信犯ですね。

サイコパスとは言い難い、何かこう、業にとりつかれた人間の末路って感じがして好感と嫌悪と半々ですね。

位置: 3,961
「単刀直入に訊いてもいいかな」
「どうぞ、何なりと」
「この小説『 迷路館の殺人』 では何故、 ある作中の人物について、 故意に読者の誤解を招くような記述がなされているのか」
「あれ。やっぱりばれましたか」
「すぐに変だと思ったさ。妙に歯切れの悪い描写だし、それにね、 その程度の知識 は僕にもあったから」
「そりゃあまあ、そうでしょう」
「ただ、噓の記述は一つもなかったね。すべて、 どちらとも取れる曖昧な書き方 で済ましている。現実事件の〝推理小説的再現〟と述べた手前、明らかに現実に反するような書き方はできなかったってわけですか、センセイ」

ここの種明かしも良く出来ている。ちょっと後付け感もあるけどね。
でも、素晴らしい。

館シリーズの中では十角館の殺人と双璧ですね。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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