『GOTH 夜の章』感想 いわゆる猟奇テイストの中二病

あぁ、こういうの、流行ったなぁという印象。
ビジュアル系とかと同時並行で、えらく暗い物事の捉え方が好きなやつがいるなぁと不思議に思った記憶があります。

連続殺人犯の日記帳を拾った森野夜は、次の休日に未発見の死体を見物に行こうと「僕」を誘う…。人間の残酷な面を覗きたがる者〈GOTH〉を描き本格ミステリ大賞に輝いた乙一の出世作。「夜」を巡る短篇3作を収録。

森野夜が拾った一冊の手帳。そこには女性がさらわれ、山奥で切り刻まれていく過程が克明に記されていた。これは、最近騒がれている連続殺人犯の日記ではないのか。もしも本物だとすれば、最新の犠牲者はまだ警察に発見されぬまま、犯行現場に立ちすくんでいるはずだ。「彼女に会いにいかない?」と森野は「僕」を誘う…。人間の残酷な面を覗きたがる悪趣味な若者たち―“GOTH”を描き第三回本格ミステリ大賞に輝いた、乙一の跳躍点というべき作品。「夜」に焦点をあわせた短編三作を収録。

叙述トリックがすごい!と誰かが紹介していたので読んでみた。
そういえば中学だか高校だかで読んだ気もする。全く記憶にはないけれど。

読了し、そもそも好きなテイストではないと思った。

犬Dog

別に購入した革製のケースに入れていた。
僕は、異常犯罪の犯人を観察するのが好きだ。そのための行動を起こしているうちに、かつて、数人の女性を殺害した犯人と顔を合わせたことがある。

こういう黒歴史まん真ん中ってのは、あんまり好みじゃないんですよね。
全部見てやろう、的なのは好きだけど、異常犯罪の犯人観察まで行くとね。

猟奇的なのは好きじゃない。

名前なら前の飼い主が橋の下で呼んでいるのを聞いていたし、手紙にも書いてある。したがって、この犬にはすでにユカという名前があることを説明する。

叙述のための叙述ですが、これはちょっとあざとい。
「嵌めようとしている」感がつよく、まぁ、嵌められたなぁという印象。

僕は、昨夜の様子を思い出す。時折あの少女は、ゴールデンレトリバーの方を見ながら行動していた。汚れるのを嫌ったのか、服を脱いで動物に嚙みついていた。

犯人に「実は異常」を着せるのは、あんまり上手な手段とは思えませんね。
よくある猟奇的嗜好のせいってやつを、後出しするのはフェアではない。

記憶Twins

「姉は私に、しっかりしなさいこのぐずって……」  彼女は、耐えるように強く目を閉じて 眉間 にしわをよせた。 「その言葉を聞いた途端、姉を助けようとしていた私の腕から力が抜けていって……」  夜の体が、ずるずると下へおりていく。

この話はわりと好きだった。なんとなく結論は分かっていたけど、プロセスが秀逸。
この「騙しに来るぞ」という振りかぶりがあると、すこし興が醒めるけどね。

あとがきPostscript

補足説明しておきます。『GOTH』はもともとライトノベルというジャンルで発表された小説です。ライトノベルの定義はややこしいので書きませんが、特筆すべきことは「ライトノベルに授ける賞など当時はひとつもなかった」という点です。つまり『GOTH』が何らかの賞を獲得するなどという可能性は、小説が執筆される前から皆無のはずでした。

難しい時代に書かれた、というのは間違いないでしょう。
今以上に選者のアタマは硬かったでしょうからね。

あたくしもどちらかというと頭の硬い選者たちと価値観が似ているところがあります。

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