『ハローサマーグッド・バイ』感想 あたくしにはそれほど刺さらず

これね、『ド嬢』でも激推しされていたけど、あたくしは、まあまあでしたね。

夏休暇をすごすため、政府高官の息子ドローヴは港町パラークシを訪れ、宿屋の少女ブラウンアイズと念願の再会をはたす。粘流が到来し、戦争の影がしだいに町を覆いゆくなか、愛を深める少年と少女。だが壮大な機密計画がふたりを分かつ…少年の忘れえぬひと夏を描いた、SF史上屈指の青春恋愛小説、待望の完全新訳版。

看板に偽りはないんですが、うーん、最後にゃ別に驚愕しなかったな。
ずっと脇役だと思っていたやつが出てきて大逆転!ってのはロマンがありますが、元々超自然的な存在だったしな、って気持ちも大きくある。

ちょっと持ち上げられ過ぎの感は否めません。

位置: 358
大陸塊の半分(手の甲の側)が山脈東側のアスタで、もう半分(指の側)の表す西側が、海岸線が深く入りこんだぼくたちの国エルトの領土だった。

この2国の戦争が大きい物語のメインではあります。

位置: 974
ブラウンアイズはぼくの顔を真剣に見つめていた。真剣なときの彼女は、ほんのちょっと悲しそうに見える。

まぁ、読んだ人みんな思うでしょうが、ブラウンアイズかわいい。
みんなそれぞれのかつての想い人を重ねて思うんだろうなぁ。

位置: 1,887
「あんただって悪くないよ、アリカ-ドローヴ、欠点はあるけどね」リボンは青い純粋な目でいった。長いこと考えこんでから口をひらいて、「もしここから抜けだせたなら、ええと、あたし……もっと感じよくなる努力をする。たぶん……たぶん、ほんとうのあたしを知ってる人が増えたら、もっとあたしを好きになってもらえるかも。自分の 外面 がよくないのはわかってる、あなたといっしょで。でもここから抜けだしたら……約束してくれる、ドローヴ?」
「なに?」ぼくはどっちつかずな答えをした。
「ここから抜けだしてから、あたしがまた感じ悪くなってると思ったら、そう、いばったり、嫌なやつになったら、教えてくれる?」
「わかった」

リボンもかわいいよね。ラノベだ。
恋愛のレベルが幼い。幼い可愛さ。

位置: 2,144
もしスクウィントを見つけられるなにものかがいるとすれば、それはロリンのはずなのだが。困っている人間の感情を感知する神秘的な能力があるのだから。

ほらね、こいつ、元々そういう超自然的な存在なんですよ。

位置: 2,219
逆境にあると人々はこんな風に団結するものだという話は聞いていたから、こうしたことはある程度まで納得がいった。ただひとつ、不安に感じたのは、ぼくたちはいったいだれに対して団結しているんだろう、ということだ。論理にかなった答えは、敵国のアスタだ──けれど、戦争が人々の口にのぼるのはほとんど耳にしない。人々から割当制の責めを負わされているのは、アスタではなかった。責められるのは政府だった。蒸留液燃料の不足、立入禁止区域の急増、時おり海で消息を絶つ船。あらゆる災厄、あらゆる苦難が政府のせいにされた。

政府の役人である両親と、想い人の家族を擁する街の人々。その間に揺れる、まぁ、ロミオとジュリエットですね。

こういうリアリティ、好きだね。

位置: 3,124
「親しかった ってどういうこと? 死んだっていうの?」驚いているという調子をちゃんと声にこめられたと思う。
トラックがこちらのほうへ丘をガタゴトと登りながら、警笛をうるさく鳴らしていたが、道幅は 脇 を通りすぎるのにじゅうぶんな余裕がある。メストラーがかすかに 眉 をひそめた。
「名簿を見ていないのかい? 神殿に掲示してあるんだが。シルヴァージャックは〈イザベル〉が沈んだときに行方不明になった気の毒な人のひとりだ。まったく運がなかった。ほんとうにおそろしい事故だ」
心臓が激しく打ち、手のひらに汗が出てきた。トラックがやかましく近づいてくる中で、ぼくはメストラーのほうをむいて、モーター車から飛びだす体勢を取りながら、相手の顔をじっと見つめた。このときだったのだ。このときぼくは、役人階級との縁を、母や父との縁を、冷血な大勢の人殺しどものすべてとの縁を、完全に切ったのだった。メストラーはぼくの表情からそれを読みとっていて、もはやその目には友情も、慈愛に満ちた気さくさもなかった。ぼくが非難を浴びせようと口をひらいたとき、メストラーはぼくから視線をついとそらすと、目を大きく見ひらいて丘の下のほうを食いいるように見つめた。
「なんだこれは? 車から離れろ、少年! 急げ!」

どこかファンタジー味を残しながら、でも無慈悲な方向へ物語は舵を切っていく。
その具合が秀逸なのは間違いない。

位置: 3,920
ストロングアームは両手で金網を握りしめ、指が圧迫されて白くなるのが見えた。「いいだろう」ストロングアームは抑制された声でいった。「おれたちは〈イザベル〉に入ってきた。積み荷は大砲や軍需品で、パラークシを守るためのものだという話だったな。じゃあ聞かせてくれ。なぜ船内にあるものはすべてアスタ製なんだ、ええ? 大砲も弾も補給品も、缶詰も蒸留液も、全部アスタ製だったぞ! なんで議会が敵と取引をしてるんだ?」声が高まって 咆哮 になる。「おまえら、どっちの味方なんだ?」

結局、そういうことよね。
知らぬ庶民が損をする。これある切り取り方をすれば真実味がある。簡単で乱暴だけどね。

位置: 4,002
「フューさまの名にかけて、確かに都合はいいだろ!」ぼくはまた自分を失いかけていた。「そうすれば、アスタ人とエルト人がたがいを滅ぼしあってるあいだに、ここを自分の国民に対して 要塞 化するみたいな防護手段がとれるものね。そして父は……このことを知ってたんだ、最初から……。あんたたちはさ、全然気にならないわけ、自分たちがでっち上げた戦争で死んだ人がいるんだよ、いまも死んでるんだよ?」
「どっちみち死ぬはずだった連中だ。大義のために死んだほうがしあわせだろう……。聞くんだ、ドローヴくん、きみがどう感じているかは理解できる」

ガンダムみたいだ。

位置: 4,196
いつだってあたしを通してくれるから。あたしのためになんだってしてくれる──ここの中には、ほとんど女がいないんだろ。こういう状況で女が持ってる力ってもんを、あんた、ほんとにわかってないねぇ、ドローヴ」
「頼むよ、そんなしゃべりかたはやめてくれ、リボン」
「守衛たちは、自分たちの居住区にかくまうから、あたしがいることは絶対気づかれないっていってる。それにさ、あんただってあたしが中でいっしょにいたほうがいいだろ、ねえ、ドローヴ? 前にあたしのこと、かわいらしいっていってくれたじゃない、それにとってもすてきなことしてあげられる、ね。してほしいんだろ、あんたも? あんたはいつだって、あたしとやりたいって思ってた、違うの、ドローヴ?」リボンの浮かべた笑みにはぞっとした。まるで悪夢だ。

悪夢だよ。マイクルさん、そこまでリボンを貶めることないじゃない。
どっちかを下げることでブラウンアイズが上がるだなんて思っちゃいないだろうけど。それにしても絶望感ある。

位置: 4,305
母が出ていき、残されたぼくは猛烈に腹を立てながら、気の抜けた笑顔で手もとのコチャを見つめている不愉快な女の子をにらみつけた。その子の顔はウルフを連想させた。似ているのはそれだけではなく、さっきから気づいていたことだが、胸がない。

胸がないのは、まぁ、駄目だよね。酷い話だけど。
結局、そこなんだよ、ドローヴ。

お前もおっぱい星人だな。というか男はみんなそうか。

The following two tabs change content below.
都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする