『ルポ 消えた子どもたち 虐待・監禁の深層に迫る』感想 誰にでも優しい世界にできなくてごめんな

NHKの取材力よ。

役所や学校、地域も見逃していた 虐待の衝撃的事実!

18歳まで自宅監禁されていた少女、車内に放置されミイラ化していた男の子─。虐待、貧困、保護者の精神疾患等によって監禁や路上・車上生活を余儀なくされ社会から「消えた」子どもたち。全国初の大規模アンケート調査で明らかになった千人超の実態を伝えると共に、当事者23人の証言から悲劇を防ぐ方途を探る。2014年12月に放送され大きな反響を呼んだ番組取材をもとに、大幅に加筆。

なぜあたくしはこんな暗い話を読みたがるのか。目を背けたくないから、というのは格好良すぎるでしょうね。

しかし、あったことを知っておくだけでも、大事なことなんじゃないかしら。

第一章 十八歳まで監禁されていた少女

位置: 359
結局、小学校は、六年間一度もナミさんの姿を確認しないまま対応を終えた。なぜもう一歩踏み込んで、彼女を助け出すことができなかったのか。

あたくしも、大人の一人として、身につまされる思い。
これ以上踏み込んでも……というラインは必ずある。しかし、それで悲しい思いをした子どもが過去にいて、今もいるだろうことは事実。

位置: 387
今思えば、学校の先生たちには、どんなにガードが固くても、子どもを助けるまでは粘り強く関わってほしかった。本当に。母親がどんなに断ろうが、いきなりあがり込んで不法侵入で訴えられるんじゃないかとか、そんなことを気にしていたら助けられる子どもも助けられないので。

そりゃそうなんだけど、先生たちにも色々あってね。
誰が悪いかと言われると難しいんだよな。罪を憎んで人を憎まず、ってのが理想かな。

位置: 398
児童相談所は、通告について関係機関と協議した結果、虐待のリスクはないと判断した。誰もナミさんの姿を確認できていないことこそがリスクであるという判断にはいたらず、ようやく訪れたナミさんが救い出されるチャンスは、活かされずに終わった。

ただの絶望。

位置: 423
「あるときから、もう先生も来なくなったのが、本当につらかったです。

そしてそんな態度を取りかねない自分にもう一度絶望。

位置: 447
一方で、三人が色々話し込んでいるときに聞こえてきた母親の言葉は、ナミさんを案じる内容よりも「もしこれで私、逮捕されたらどうなるんじゃろ」「何か罪に問われることはなかろうか」といった内容だった。

保身の塊。しかし、人間とはそんなもんのような気がする。
今一度、自分が正しいと思っているときにこそ、人間の本性というのは見えるものだということを、認識して生きていきたい。あたくしもごく短絡的にいきる質なので。

エピローグ もう一度、前を向いて

位置: 2,149
「なぜ保証人が必要なのか、あんなひどいことをした親でも保証人になれるなら、どうして私だけじゃだめなのか」

言い返せないよ。

位置: 2,172
取材をしていた間、ナミさんが何度かつぶやいた言葉がある。
「私は子どもが好きだけれど、自分が結婚する未来も、母親になる未来も、全く想像できない。自分がちゃんと育てられていないし、虐待は連鎖するっていうから、私も同じようなことをするんじゃないかって思うと恐いし。幸せになる自分の姿が全く想像できない」
そして言うのだった。
「今もこんなにずっと苦しくて、こんなんだったら、実家を飛び出さずに虐待を受け続けていたほうがよかったのかもって思う」

それ、言われちゃうと立つ瀬なし。

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